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動脈硬化症

動脈硬化症について

動脈硬化症とは

動脈は酸素と栄養分に富む血液を心臓から全身各部に運ぶ血管です。ただ単に血液を運ぶだけでなく、状況に応じて心臓に押し戻すなど、ポンプのように効率よく血液を運ぶ作業を行っています。そのため動脈はとてもしなやかで、簡単に破れたり詰まったりしない、強さと弾力性をそなえ持っています。動脈は「内膜」「中膜」「外膜」の3つの層からできています。血液と接しているのが「内膜」で、その表面は「内皮細胞」という細胞の層に覆われています。「動脈硬化」とは「動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変」の総称です。一般に動脈硬化といえば「粥状動脈硬化」を指す場合が多く、ここではそれを動脈硬化として説明します。高血圧や糖尿病などが刺激になって内皮細胞が傷つけられると、脂肪物質が血管壁の中にたまって内膜が厚くなり、内膜の中にコレステロールが蓄積し、次第に脂肪分が沈着して“おかゆ”のような状態になるのです。
“おかゆ”状の病変を「粥腫(プラーク)」といいます。この病変部分が破れ、その結果できた「血のかたまり(血栓)」が原因で動脈が閉塞し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、閉塞性動脈硬化症などが起こります。

血管イメージ

動脈硬化が起こりやすい場所と主な病気

  1. 心臓の冠動脈→心肥大、狭心症、心筋梗塞
  2. 脳の動脈→脳梗塞、脳出血、くも膜下出血
  3. 大動脈→大動脈瘤
  4. 腎臓の動脈→腎硬化、委縮腎、腎不全(尿毒症)
  5. 末梢動脈(細い動脈)→閉塞性動脈硬化症(手足のしびれ、冷えなど)

動脈硬化の5つの危険因子

動脈硬化の原因はいくつかあります。この変化を起こしたり、進めたりする条件を「危険因子」と呼んでいますが、その中には「高血圧」「高脂血症」「喫煙」「肥満」「糖尿病」「ストレス」「男性であること」「齢をとる加齢」が挙げられます。「男性であること」「齢をとる加齢」は自分ではどうにもなりませんが、他の因子は自分の意志次第でコントロールできる可能性があります。
こうした危険因子を多く持つ人ほど、動脈硬化が加速度的に速まることがわかっています。危険因子の中でも「高血圧」「高脂血症」「糖尿病」「喫煙」「肥満」は特に重要で5大危険因子になっています。

(1)高血圧
動脈硬化が進みやすい血圧は「収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合」で、血圧が高いほど脳梗塞や心臓病などにかかるリスクは当然、高くなります。
(2)高脂血症
脂肪分のうち増えると動脈硬化を促すのは、LDL(悪玉)コレステロール、高中性脂肪血症などで、反対に減ると動脈硬化を進めるのはHDL(善玉)コレステロールです。
LDL(悪玉)コレステロール値は140mg/dl以上、またHDLコレステロール値は40mg/dl以下になると、狭心症や心筋梗塞の合併が増えるとされています。
(3)糖尿病
糖尿病の人は首の動脈の肥厚、脳血管障害、虚血性心臓病、大動脈硬化、足の閉塞性動脈硬化症などが、糖尿病でない人に比べ高頻度に、しかも全身にわたって起こりやすくなります。さらに糖尿病になると、ほかの危険因子、特に高血圧、高中性脂肪血症、低HDL血症などがしばしば起こるようになります。
以上から、危険因子は相互に関係しており、因子が増えれば雪ダルマ式にリスクが高まる反面、一つでも因子を減らせば、よい影響も広がります。治療にも予防にも5つの危険因子を減らすことが大変重要なのです。
(4)喫煙
一日喫煙量が多いほど心疾患死亡率が高く、男性においては一日20本以内の喫煙者での心疾患死亡率の相対危険度は4.2倍、20本を越える場合には7.4倍と推定されています。喫煙は、がん、肺や消化器などの病気だけでなく、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患の発症を促す強力な危険因子です。
さらに悪いことに、喫煙はほかの危険因子にも影響し、LDL(悪玉)コレステロール値を高め、逆にHDL(善玉)コレステロール値を下げますから、二重のリスクをもたらすのです。
喫煙で血が固まりやすくなり、血栓症を起こす危険も高まります。血管も収縮しやすい状態になります。動脈硬化の予防・治療にまず禁煙が必要なのはいうまでもありません。
(5)肥満
肥満の程度を示す指標としてBMI(ボディ・マス・インデックス)があります。次の式で簡単に求めることができますから、時々チェックして正常体重にするよう努力してください。
BMI値=体重(Kg)÷[身長(m)×身長(m)]で求められます。性別にかかわらず、BMI18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」と判定されます。肥満した人は血液中の脂肪が過多になりやすく、さらに高血圧、高尿酸血症、糖尿病などを合併しやすいので、ほかの危険因子にも大きな影響を及ぼします。
肥満プラス高血圧・高血糖・脂質異常を合わせたものを「メタボリックシンドローム」と呼んでいます。ひとつの病気は重くなくても、病気が重なることで動脈硬化を進行させ、脳卒中や心臓病の合併症を引き起こします。

動脈硬化症の危険因子の有無を調べるチェック項目

  • 血圧
  • 空腹時の血液中の中性脂肪と血糖
  • 総コレステロール値・HDL(善玉)コレステロール値・トリグリセライド(中性脂肪)値・LDL(悪玉)コレステロール値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)、尿酸値
  • 喫煙歴
  • 身長・体重・ウエストとヒップの周囲径の計測

動脈硬化の程度を知る検査

一般の診療では次の3項目の検査が心臓、脳、下肢の動脈硬化の程度を知る手がかりになります。

  1. 心電図
  2. 眼底検査
  3. 上腕動脈と足関節上部で測定する血圧の比ABI(ankle brachial index:足関節上腕血圧比)、脈拍の触れ方、左右差

日常の診療でも触診で動脈の硬さや、走行具合を、また胸部レントゲン写真で動脈の石灰化をチェックできます。

何か症状がある場合は下記の精密検査で、直接、動脈硬化の程度を知ることができます。

冠状動脈:
血管内エコー・シンチグラム・MRI・血管内視鏡・冠状動脈造影
脳動脈:
シンチグラム・MRI・脳動脈造影
頸動脈:
エコー・血管造影・MRI
大動脈:
CT・MRI・エコー・大動脈造影
下肢動脈:
シンチグラム・エコー・脈波・血管造影

当院では心電図、上腕動脈と足関節上部で測定する血圧の比ABI(ankle brachial index:足関節上腕血圧比)、頸部血管エコー検査で「動脈硬化の管理」を行っています。

動脈硬化のリスクを減らすには

動脈硬化の危険因子はたくさんあります。脂質異常症や高血圧、糖尿病などにかかっている場合は、まずその治療をしっかり行いましょう。しかし薬だけを頼りにして、病気のことや毎日の生活習慣について無頓着であれば、薬の作用は薄くなってしまいます。食事や運動についての知識と実行力を発揮して、以下の生活習慣を変えることができれば、動脈硬化による病気は予防できます。

1.肥満を解消する

肥満、特に内臓脂肪型肥満の解消は、動脈硬化の危険因子である高血圧、糖尿病、脂質異常症などの改善にも役立ちます。ウエストのあたりが太くなってきたら、内臓脂肪が増えている可能性があります。
食生活に気をつける、適度の運動をとり入れるなど、肥満解消に取り組みましょう

2.動物性脂肪を減らし、野菜を増やす

肉類などに多い動物性脂肪をとりすぎると、血液中の脂質が増え、肥満になりやすく、また動脈硬化を促進する原因となります。
肉類の食べる量をひかえめにすると同時に、野菜をたくさん食べるようにしましょう。野菜には、塩分を排出して血圧を下げる効用や、脂質の酸化を防いで動脈硬化を予防する効果も期待できます。

3.適度の運動をとり入れる

運動は、肥満解消のほか、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの改善にも役立ちます。ただし、すでに動脈硬化がある程度進んでいる場合には、いきなり運動を始めると心臓や血管に急激な負担がかかり、危険なこともあります。階段を上っただけで息がきれるといった人は、まず病院で検査を受け、医師の指導を受けるようにしてください。
予防のための運動には、軽めの有酸素運動が適しています。自分の体力や症状などに合わせて、散歩、ウォーキング、アクアサイズ(水中運動)などから始めましょう

4.禁煙を心がける

コレステロールが血管内壁にとり込まれ、酸化すると動脈硬化が促進されます。その酸化を助長するのが、タバコによる活性酸素です。動脈硬化の予防や改善には、できるだけ禁煙を心がけましょう。

病気についての理解と知識は欠かせません。それらを身につけるには“がんばり”が必要です。がんばりと根気で生活習慣の改善を長くいつまでも続けてほしいのです。

血液をサラサラにする食品は

動脈硬化で血管壁がかたく厚くなると血管が細くなり、さらに血液が固まって血管が詰まると脳梗塞や心筋梗塞などの前述したいろいろな動脈硬化でおこる疾患を合併してしまいます。このような細くなった血管ではドロドロの血液では詰まりやすく、サラサラの血液は詰まりにくくなります。さらにサラサラにする食品は動脈硬化の予防にもなります。
代表的な血液をサラサラにする食品を挙げてみました。

1. EPADHA
EPA(エイコサペンタ酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)は魚、特に青魚(イワシ、サバ、サンマなど)に多く含まれています。DHAはマグロにも多く含まれています。DHAは、血管や赤血球の細胞膜をやわらかくする働きにより、血液の流れを改善します。一方のEPAは、高い血小板凝集抑制作用により血栓をつくらせないことで血流をよくします。そのため、血栓を防いで血液を潤滑にする作用は、EPAの方がより高いといわれています。

2. クエン酸
酢類や梅干しなどに多く含まれているクエン酸は、弱アルカリ健康体質を促進します。ストレスや疲労などでクエン酸回路の働きが鈍ってくると、「乳酸」として体内に蓄積されてしまいます。そして乳酸をエネルギーに変えられないため疲労となって残っていきます。クエン酸は、乳酸や余分な脂肪を燃焼させてエネルギーにするなど体に活力を与えます。
さらに血液がph7.37.4程度の弱アルカリ性を維持することで血液の流れが良くなり、自然に血管の細胞の状態も良くなり、諸臓器の機能に良い影響がでます。

3. ナットウキナーゼ
納豆のネバネバの正体であるナットウキナーゼという酵素には、血栓そのものを溶かす作用があります。ただし、血栓を防ぐワーファリンという薬を飲んでいる人は、納豆にふくまれるビタミンKが薬の作用を弱めてしまうので、注意してください。

4. ポリフェノール類
赤ワインやブドウ、緑茶、ウーロン茶、ココアなどにふくまれているポリフェノール類には、コレステロールの酸化を防ぐ働きがあります。ただし、赤ワインの適量は1日グラス2杯程度までです。またブドウには果糖があるので、食べすぎないこと。
ポリフェノールの一種であるカロチノイドにも、強力な抗酸化作用があり、動脈硬化の予防に役立ちます。代表的なものに、ニンジンやブロッコリーに多いβカロテン、トマトに多いリコペンがあります。
また、タマネギに多く含まれるケルセチンというポリフェノールは、脂質類の吸収をさまたげ、体外へ排出する働きがあります。

5. アルギン酸
アルギン酸は、コンブやワカメなどのぬめりの正体でもある食物繊維です。コレステロールの吸収をさまたげ、体外へ排出する働きがあります。

6. ビタミンEC
ビタミン類の中では、抗酸化作用が強く、動脈硬化の予防に必要とされるのは、ビタミンECです。ビタミンEはそれ自体が酸化されやすいので、Cと一緒にとることがおすすめです。ビタミンEはカボチャ、アスパラガス、シュンギク、ニラ、サケ、サバ、ナッツ類、キウイフルーツなどに。また、ビタミンCはイチゴ、レモン、オレンジ、キウイフルーツなどの果物類のほか、サツマイモ、ピーマン、コマツナなどにも多く含まれています。

7. アリシン
長ネギ、タマネギ、ニンニクなどのネギ類には、血液をサラサラにする作用があります。
ネギ類に含まれるアリシンには消化促進や殺菌作用、血糖上昇抑制作用、血小板の凝集を抑えて血栓を予防する働きがあります。