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自己免疫性肝疾患とは
細菌やウイルスなどの異物を排除する生体の防御機構である「免疫」の異常で、自分自身の肝臓を誤って攻撃されることによって発症します。
肝細胞が障害される病気が自己免疫性肝炎、肝細胞で作られた胆汁が流れる胆管のうち、肝臓内の微細な胆管が障害される病気が原発性胆汁性胆管炎*、太い胆管まで障害される病気が原発性硬化性胆管炎です。いずれも治療がなされない場合は肝硬変および肝不全へ進行します。
*2016年「原発性胆汁性肝硬変」は「原発性胆汁性胆管炎」に病名が変更されました。
自己免疫性肝疾患の診断について
肝障害と免疫異常を反映する血液検査所見を参考にして診断します。
自己免疫性肝炎はASTとALTが上昇し、免疫異常を反映する抗核抗体が陽性となり、IgGが高値になります。
原発性胆汁性胆管炎では胆管障害の指標であるALP、γGTPが上昇し、免疫異常を反映する抗ミトコンドリア抗体が陽性となり、IgMが高値になります。なお、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎が疑われた場合は、肝生検を行って肝組織検査によって診断を確定することが望まれます。
原発性硬化性胆管炎は原発性胆汁性胆管炎と同様にALP、γGTPが上昇しますが、血液検査での免疫異常の所見は通常は見られません。胆管が障害されるため、進行すると黄疸が出現します。内視鏡的下での胆管膵管造影検査、MRI検査などによって、胆管の狭窄と拡張の所見を確認することで診断が確定します。
自己免疫性肝疾患の治療について
自己免疫性肝炎では、免疫を抑える副腎皮質ステロイドの内服薬による治療で、病気を改善することができます。
しかし、肝機能が正常化したあと薬を中止すると再発することがあります。さらに急性肝炎や重症な劇症肝炎で発症することもありますので注意しなければなりません。自己免疫性肝炎は治療が行われないと、重症肝炎を起こして、肝不全や肝硬変に進行する場合がありますので早期治療が重要です。
一方、副腎皮質ステロイドは肥満、糖尿病、易感染性、消化性潰瘍、骨粗しょう症などの副作用がありますので、医師の服薬指導に従ってください。
原発性胆汁性胆管炎ではウルソデオキシコール酸の内服で治療します。治療に対する反応性が不良な場合は、まずウルソデオキシコール酸の増量を行い、さらに抵抗性の場合はフィブラート製剤が用いられることがあります。
原発性硬化性胆管炎ではウルソデオキシコール酸が広く用いられます。効果不良例に対してはフィブラート製剤が投与されることがあります。胆管狭窄が進行し黄疸が出現するような症例では、胆管がんの合併を除外したうえで、細くなった胆管に対してバルーン拡張術やステント挿入など内視鏡的胆管拡張を行います。
自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎、原発性硬化性胆管炎とも肝不全に進行した際は肝移植の適応となりますが、移植後の再発も高率です。